通学電車

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都立の女子校に通う香織は通学電車でいつも同じ車両に乗っている大学生の雄一に思いを寄せていた。
 しかし2人は同じ電車に乗っているだけ。雄一は香織の存在すら気づいていないかもしれない。
 もともと内気な性格の香織には雄一に声をかけたり、手紙を渡す勇気が無かった。
 香織はいつも自分の勇気の無さを歯がゆく感じていた。

 「今日も手紙、渡せそうにないなぁ…」
 その日、香織は電車の扉のすぐ近くに立っていた。
 扉のガラスに反射して映る雄一がいつまでも遠い存在に思えた。

 キィィィーーー!!
 「うわっ…」
 「きゃっ…!」
 金属の擦れ合うイヤな音がしたと思うと、急に電車が止まった。そしてすぐに車内アナウンスが入った。

 『え〜、信号機トラブルの為しばらく停車いたします。お急ぎのところご迷惑をおかけいたします。』

 イラ立つ中年サラリーマンのため息と舌打ちが聞こえてくる。
 しかし香織はむしろ電車が止まったことをラッキーだと思っていた。


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