出られない少女
2010-06-11
夏が近くなると思い出すことがある。
中学生の時、ある夏の日のことだ。
俺は不思議な体験をした。
夏休みを迎えて、同世代の多くは友達と遊んだり宿題をやったりしていただろう。
俺はというと、サッカー部の試合や練習で、頻繁に色んな場所へ遠征していた。
サッカーのほうは、お世辞にも上手いとは言えず、多忙な練習にやる気も薄れかけていた。
そんなおり、俺が住むC県の中心部より2時間ほど離れた中学校に遠征することになった。
当日は快晴。
空模様とは裏腹に、俺の気持ちは長い移動時間と逃げ出したいような気分で曇っていた。
しかし、そこはどこか懐かしい田舎町で、
美しい自然と田んぼ、そして照りつける太陽とセミの声が暑いながらも、俺を癒していた。