各駅停車の女

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 長い連休も終わりに近づき田舎の実家から東京のアパートに戻るとき、新幹線を使えばよかったのですが、つい各停に乗り込んでしまいました。
 東京までは数時間かかるのですが、ボックスシートの窓際に座り頬杖をついてうたたねをしていると、
 「かんな。起きろよ。久しぶりじゃねーか」
 目を開けると、幼馴染のごんた君でした。
 「あなただったの」
 露骨に表情を曇らせる私。
 それでもごんた君は向かいの席に陣取り、膝を突き合わせる状況に。こんなんで東京まで行くなんて。
 何としても途中の駅で降りて引き返すわ。
 「まあ待てよ。奇遇だから、ゆっくり話を聞かせてくれよ」
 列車は発車したばかり。
 『ああ、地獄』
 そんなことを考えるのにも訳はあります。
 実は昨日、大好きだった祖父に処女を奪われてしまいました。
 「新幹線で来たんだろ。ところでわしの新幹線もいまだに駅を飛ばしおる」
 孫娘にはあらましきおやじギャグだ。


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