その行為は誰のため

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2010-12-02

「…そろそろ、帰らないとな…」 
俺の隣の席に、あいつの変わりに花瓶が陣取るようになった日から一週間経つ。 
珍しくあいつが欠席した。それだけの筈だった日。 
担任が入ってきて日直の「起立、礼」を待たずに喋り始めた時、 
その日は「それだけ」では済まされない日になった。 
その日から俺は、 
「誰よりも早く来て花瓶の水を替え、誰よりも遅くまで残って花瓶を眺める係」になった。 
発案・命名 俺。 
クラスメイトが心配してか、帰りがけに声をかけてくれる事もあった。 
その度、自分がしている事がおかしい事を思い知らされる。 
以前、親父がこんなこと言っていた。 
「葬式なんてのはな、死んだ奴のためにするもんじゃねえ。 
 残された奴が踏ん切りつけるためにやるもんだ」 
…俺だって解ってるよ。あいつはもう死ん

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