世界で一番愛しい人 (2)
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わたしは学校から帰ると、すぐに服を着替えてバッグを用意し家を出た。
電車で二駅、それだけで町並みは大分変わり、わたしを知っている人も激減する。人の多い駅の公衆トイレに入り、貰ったウィッグをかぶって服を少しだけ変える。これだけでわたしが誰か判らなくなるらしい。
駅を少し出た所で裏道に入り、汚れの多い入り組んだ場所を進んでいく。最初は戸惑ったこの道も、今では慣れたもので迷いはしない。
着いた場所は、見た目には廃墟でしかないマンションの一室。今ここに水も電気も通っているのは、和也さんが使えるように手配してくれたからだ。あまり人に知られる事じゃないから、と気遣ってくれた。
和也さんはとてもいい人だ。親身に相談に乗ってくれて、わたしと修ちゃんとの仲を修復してくれている。わざわざわたしに指導してくれるために、こんな場所まで用意してくれるのだ。本当に頭が上がらない。
わたしが初めて《せっくす》をした時は、何も知らなかった上に痛がるばかりだった。修ちゃんが距離を離したもの、それが原因だと和也さんが言っていた。
あれから殆ど毎日