生きている内に出会えば
2006-04-12
昔、アパートに住んだことがある。
その部屋は本当にボロいアパートの二階にあった。
全く人気がなく不動産も怪しげな所だったので、四室あったが俺以外に住民はいなかった。
大家さんもあまりパッとしない人で、一度挨拶に来たきり見ることはなかった。
俺は金がなくやっと見つけた住む家だったので、しょうがなくそこに住むことになった。
荷物を運び終えて、飼っていた金魚を部屋に持ち込むと、突然金魚が暴れだした。
俺は何か、嫌な予感がした。
しばらくすると金魚は収まったが、まるで観念したかのようにピタリと動く事をやめた。
暫くはそこのアパートと大学との往復だった。
アパートには本当に何もなかったので、暇な時はいつも友達と外でフラフラしていた。
アパートはとても薄暗く、疲れて戻ってきた俺を癒してくれはしなかった。
「そのこと」に気付いたのはちょうど一ヶ月経ってからだった。
俺は物を忘れやすく、色々と何かを失くしやすい