無邪気な少女 番外編
2012-02-13
『お客様に最高の癒しとくつろぎの空間を』
そう書かれている招待券を手に持ち、塚田は近所のスーパー銭湯にやってきた。新聞販売店に勤めている同級生に頼まれて、普段あまり読むことのない新聞を取ることにしたのだが、サービス品の中にココの入浴&食事1000円分の招待券が5枚綴りで入っていた。
塚田は若い頃に俳優としての成功を夢見て上京し、舞台を中心に活動して、チョイ役だがテレビドラマにも出演した事があった。エンドロールに自分の名前が映るとテレビの前で大騒ぎし、実家の両親にも胸を張って電話で伝えた。
しかし芸能の世界は甘くなく、演技としての評価以前に人間関係のいざこざに疲れ、志し半ばで俳優としての道を諦めた。
反対する両親を押し切り、デカイ口叩いて実家を飛び出した手前、なかなか地元に戻ることもできず、長い間東京でバイト暮らしをしてたが、2年前に父が他界し、葬式で実家に帰った時、母に”このまま一緒にくらしてほしい”と言われて実家に戻ってきたのだった。
しかし父の死から1年後、父を追うように母もこの世を去っ