父とドーナツ

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2011-02-09

学生時代、書類の手続きで1年半ぶりに実家に帰った時のこと。 
本当は泊まる予定だったんだが、次の日に遊ぶ予定が入ってしまったので 
結局日帰りにしてしまった。 

母にサインやら捺印やらをしてもらい、帰ろうとして玄関で靴紐を結んで 
いると、父が会社から帰ってきた。 

口数が少なく、何かにつけて小言や愚痴を言う父親のことが苦手で、 
一緒に居ると息苦しさを感じていた私は、父が帰宅する前に帰って 
しまいたかった。日帰りできないくらい通えない学校を選んだのも 
父から距離をおきたかったからだ。 

父が、「お前、泊まるんじゃなかったのか」と訊いたので、 
「ちょっと忙しいから」とぶっきらぼうに答えると、手に持っていた 
ドーナツの箱を私に差し出し、 
「これやるから、電車の中で食え

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