継呪の老婆
2011-05-18
東京の自宅に戻る上りの新幹線の中で、私は、昨晩から今日にかけての
出来事を思い返し、憂鬱になっていた。ハンドバッグから、ベッコウの髪留を
取り出し暫く見つめていると、涙が溢れ止まらなくなった。
幼馴染で親友でもあったトモに最後のお別れをするために、とある海沿いの
小さな温泉町に行っていた。私にとってもその町は故郷だ。髪留めをくれた、
トモのお母さんの言葉を思い出した。
「トモちゃんとずっと仲良くしてくれてありがとう。あの子は、サトちゃんが
いるから、仕事は大変だけど東京の生活にも耐えられるって、いつも・・・」
トモのお母さんは、涙でそれ以上言葉を続けることができなかった。
最後に、この髪留を差し出して、私に告げた。
「お友達には、あの子の遺品をあげているの。これは、あの子が最後の日に
身に着けて