昭和の「ダフニスとクロエ」 夏編

開く
2018-04-02

 昭和の「ダフニスとクロエ」 夏編

[梅雨]

 6月にはいるとすぐ梅雨が始まった。例年だと6月中旬から始まるのだけど、今年は早く始まった。梅雨は人々にとって実にイヤな季節で、身も心も滅入ってしまう。気温は25℃を超えるのに、毎日ジトジトと雨が降り、湿度が100%近い日が続くのである。こんな状況を一番喜んでいるのはカビである。当時はジャーなど無かったから、朝、ご飯を炊くと夜には腐っていた。だから気温が低くなる夜にご飯を炊き、食い残したご飯をザルに入れて涼しい場所につるし、朝ご飯で食べ尽くしていた。それでも食い残した時には、ご飯は昼や夜までもたないので、新聞紙で作る袋のノリや和服をばらして洗い張りするときのノリに使用していた。
 カビは何も食物や木材だけでなく、シラクモやミズムシ、インキンタムシのように人間の身体にも繁殖した。聡も小学校低学年から左足がミズムシになり、いまだに悩まされている。

 カビ以上に梅雨を喜んでいるのは農民であった。稲作の水田は大量の水が必要で、空梅雨になんかなれば、大凶作になるからであ

お勧めの体験談