新緑の季節(とあるBarにて)
2009-01-11
俺は、車のフェンダーに軽く腰を落とし煙草に火を点けた。日曜日の朝だというのに、駅前は静かだった。桜の蕾が膨らみ始めた3月の中旬頃、俺は一人の女性と出会う。俺の手元には彼女の名前と自宅のTELが書かれたメモ用紙 女性らしい文字で最後にありがとうと書かれてある。
ふと改札口付近を見ると先程まで、身体を重ねていた彼女が満面の笑みで手を振っていた。昨夜の淫靡で艶かしい彼女とは違い清純ささえ漂うごく普通の女性に思える。俺は、軽く手を上げ微笑み返す。そして改札口に消える彼女を見届けると車に乗り込みイグニッションキーを捻る。軽いセルモーターの後、直6シルキーシックスのエンジンに火が入った。まだ少し肌寒い風を車内に受け俺は帰路に付いた。俺の手には彼女の柔らかい肌の温もりが残っているように感じられる。
「やべぇ~ 立っちまったぜ。」
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溯る事17時間前、俺は最近馴染みにしているBarのカウンター席で一人バーボンを呷っていた。楕円のカウンター席の周りには20席程の客席、カウンターの中には3人のバーテンダーがグラスを磨