見知らぬ懐郷

開く
2007-05-08

カラン
とロックグラスの氷が音を立てて解け落ちるのを聞いて、不意に自分が寝すぎたことに気づいた。

真紅のカーテンが光を浴びて半透明になっている。音を立てないよう気を配って開くと、やっぱり青と深緑の眩しい白昼の景色が視界を覆った。

都心に隣接しているとはいえ、目立った高層建築のないこの町の空は広い。凪ぐ風は並木の葉をやさしく揺らし、身体を撫でるように降る陽光も柔らかい。

――私はこの町に固執しているのかもしれない

乱れたシーツに歪な影をつくっている彼女の白い肌を尻目に、グラスに滴る氷を頬張った。



くぅくぅと息をたてて眠る彼女はよほど疲れたんだろう、そっと毛布をかけてやると猫のように丸く包まった。

無理もない、今の静寂な午後とは裏腹に、昨夜私は激しい時間を彼女に求めたのだ。その虚脱感は今も、私の身体にも重く圧し掛かっている。

さして強欲な方ではない私だが、週に

お勧めの体験談