泣いていた母を抱きしめて

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僕が学校の授業を終え帰宅すると、両親の寝室からすすり泣く声が聞こえたのです。

ドアを開けると真っ暗な部屋で母がシクシク泣いていました。

僕は母の側に行き「どうしたの？母さん！」と聞きましたが、母は何も答えず座って窓の外を焦点の定まらない目で見ていたのです。
何かあったことはその場の雰囲気で察しがつきました。
父の暴力だとすぐに感じました。

どうして母は離婚しないのか不思議でたまりません。
僕が高校を卒業するまではと、おそらく我慢しているのです。
そんな母が可哀想で仕方ありませんでした。

真っ暗な部屋で僕は母に「母さんもう我慢しないで別れたら？」と言いました。

しかし母は言葉を濁すだけでした。

「カズちゃん優しいのね・・」

僕は何故か返答出来ず、母の顔を見つめていました。
母と目と目を合わせているうち、どちらからともなく抱きしめ合ったのです。
きっと母は淋しかったのでしょう。

強い力で僕をぎゅっ