ニートの僕が結婚した 会社の大勝負を引き受ける補足3
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お客様の中央研究所に持ち込んだ製品サンプルは2時から5時半までかけて各種分析を受け純度、物性共にスペックインした。お客様は研究所の技術者の他に本社から営業、開発等の責任者も来ていた。お客様にとっても新薬は大型商品で多額の収益をもたらす期待があった。
スペックインの報に緊張していた場は一気になごみ握手を交わした。特に純度と色味は先方の予想をはるかに超える良好さで研究の責任者が驚いていた。それで、営業同士が売渡価格の交渉を始めた。工程表を作るときに原単価表も作って営業に渡してあるので彼は心に決めた高値を持っていた。
ところが先方の提示額は弊社営業の額の2.5倍だった。ポーカーフェースの営業課長が「結構です。その額で速やかに製品を御引き渡しましょう。」と答えるとお客様は安堵してくれた。そこまでは良かったのだがお客様の本社開発部がとんでもないことを言い出した。
「この医薬には全世界展開できるポテンシャルがあります。毒性試験から臨床試験まで考えると全工程1バッチで生産された品が10トン必要になります。その製造を受けて頂きたいのです。」弊社スタッフが一斉に僕の顔を見た。技術部