浮気して帰った妻と
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その頃の妻は、よく、夕食の時や寝床の中で、妻と同じ職場の上司、下川克己のことを口にしていた。その話を聞く度に私は、結婚七年目のマンネリ化した夫婦生活が、妻を他の男に目を向かせるようになったのかと思って嫉妬もし、その反面、妻が他の男に目を向けるのは、自分が妻を優しく愛していないことにも原因があるのではないか…とも思っていた。
下川克己は妻の職場の上席であって、仕事以外の深いつき合いはないとは思ってはいたが、それでも男の嫉妬心は芽生えていた。土曜日の午後だった。私は妻の勤務が終わる正午過ぎに、妻の職場の前に潜んで妻が出るのを待った。十二時半だった。妻は下川と並んで出てきた。一見、仲の良い二人に見えた。私はその後をつけてた。二人は西川駅前の路地に入って行った。そこは飲食店が並び、もう一歩路地を入ると、昼でも入りやすいラブホテルも並んでいた。多分、食事か喫茶か、と思って、その帰りを家で待った。
妻か帰ってきたのは午後四時過ぎだった。「ただいま…」と云って帰ってきたその仕草には何の後ろめたい様子もなく、普段と変わりない妻の態度だったが、それでも私は嫉妬していた。時間的に見ると、昼食を済ませた