一進一退
2007-07-21
事務職をしている友人のお話。
転職にともない、それまで住んでいたアパートを引き払い、
15㎞ほど離れた別のアパートに住み始めた。
引っ越しを終え、ほっと一息つき、新しい日常生活をはじめる。
前の職場が倒産したものの、失業保険が切れる前に新しい職がみつかり、
また、その職場は前の職場とほぼ同じ仕事だったため、一週間もすると
彼はすぐに職場に馴染めた。残業もほとんど無く、同僚や上司も
穏やかで、彼はにこにこして毎日を過ごしていた。
だが、ある時、彼は自分のアパートの奇妙な現象に気がついた。
まず真っ先に気がついたのは、玄関の靴が、揃えていてもばらばらになる。
次には、きっちりしめていた風呂場の水道が、朝起きると細く水が流れている。
風呂場の前の鏡に、指紋や手のあとがついていることがある。
知人は若い頃は居合道に熱中し、三段まで持っている武道家でもあり、
のんきというか豪快な性格であった