行き違いの女

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 その日は、というかその日も現場でした。
 そとまわりは楽しいといえば楽しくて、知らない道を車を走らせるのは、なんとなく心が躍ります。
 天気もいいし、今日も暑くなりそう。
 昨日の雨で、道はぬかるんでいたのですが。
 「あっ」
 車が往生してしまいました。
 「ええっ。真里先輩。こんな山の中で熊でも出たらどうするんですか」
 今年入社したばかりの娘が同乗していました。
 「レナちゃん。心配ないわ。支店のえむおさんにきてもらうから」
 電話をすると夫はすぐに駆けつけるとのことでした。
 「えむおさんてあの」
 レナちゃんは表情を曇らせました。
 『なぬっ。の〇たのやつもうつば付けてんのか』
 最近結婚して夫になったえむおさんを私はの〇たと呼んでいました。
 
 山道をうっかり入ってきてしまっていました。
 数十メートル先に舗装された道路があったので、歩いて戻ってみると、そこで夫を待つこ


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