満員電車の女の官能

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がくん、という衝撃で目が覚めた。
     
同時に、額に硬いものがぶつかり鈍く痛んだ。
壁に押し付けられる自分の身体。揺れる足元。誰かの鞄の、無骨な金具が腰に食い込む―――その感覚で、意識がはっきりしてきた。
     
そうだ、今は通勤中だった。
     
女物の、甘ったるい香水の匂い。無駄に油っぽい整髪料の刺激臭。朝まで飲み明かしたのか、呼気に含まれるアルコール臭。揚げ物のような汗の匂い。粉っぽい、化粧品の匂い。大勢の人間が閉鎖された空間にいることによる弊害の香りが、そこかしこから漂う。
分かりやすく言おう。
非常に臭い。そして狭い。苦しい。季節柄外の空気は冷たいはずなのに、車内には熱気がこもり、扉のガラスは薄く曇っていた。人の波に圧し潰される腹部が何故だかキリキリと痛む。
     
(ちくしょう)
     
満員電車はこれだから嫌なんだ。
先程までの睡魔はどこへやら、今は前方を扉と壁に、手摺りが腰に


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