田園
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花曇りの朝とあるお店の窓際でコーヒーを飲んでいると、歩道を悠々と自転車を走らせるPさん(元同僚)を見かけました。
「ハイブリッドの車、いいよ。君も乗りたいでしょ」
「それから、愛人を作ってもいいよ」
「お父さん、やめて」
結婚の話で盛り上がっていました。
慕夢 出留造
トラクターで田んぼを作っています。この時期田植えで大忙し。
私、慕夢 智絵梨
高校生の時母を亡くし、父と二人暮らしをしています。
同僚のPさんとの話は破談になり相変わらず父と二人暮らし。
「恋人同士みたいだな」
冗談でなくそういわれます。
Pさんにも。
女子高生のころ女ミニで闊歩した街も今はさびれて人通りもない。
あのときはこれっきりと思っていたのに。
「親子だからな。亡くなった母さんを思い出すよ」
ビニールハウスの中で苗床作りを手伝っていました。
ふいに父がそんなこと