かば
2008-07-29
弟の佑介が体を悪くした。
まだ6歳だった。
病室に行くと俺があげたスケッチブックに
いつも何かを書いていた。
俺がそれを見ようとすると怒った。
春風がまだ吹かないころに、あいつは6年の生涯を終えた。
空のベッドの上にあのスケッチブックがあった。
看護婦さんがおいてくれたらしい。
そのうえには手をつないだ4匹のカバの絵と
それぞれに家族の名前が書いてあった。
「そっか、あいつこれを一生懸命、描いていたのか」
カバはあいつがまだ元気だったころにいつも行った
動物園のお気に入りの動物だ。
どうやらそれは絵本になっているらしかった。
俺はページをめくった。どの絵も字もあいつなりに丁寧に書いてあった。