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2006-09-26

N子は映画鑑賞と読書が趣味の、平凡なOLだった。

休日になれば1人で町の映画館へ出かけ、少しブームが過ぎた映画をガラガラに空いた客席から眺める。
これが彼女にとっては至福のひとときであった。

ある日曜日、いつものように映画館へ足を運んだN子は黒のスーツに身を包む若い男に声をかけられた。
N子は警戒し後ずさりしたが、男は屈託の無い笑顔を向けて言う。
「私はこう見えても映画監督なんですよ。今、この映画館で放映されているこの作品もそうです。もし良かったら観賞した後に映画の感想を聞いてもいいですか?」

--え、ええ、結構ですよ…。

突然のことにドギマギしながらも何とかそう返事するN子。
若い男の笑顔にすっかり魅了され、顔が赤く蒸気するのを感じたN子は、そそくさと館内へと駆け込んでしまった。

その日にN子が見た映画は客の入りも3割ほどの、とても秀作と言えたものではないB級パニック映画であった。
主人公

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