忌むべき日常行事_2

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2012-11-06

翌日の夜半、お実は寝間着姿のまま母屋を抜け出した。 
 その夜は満ちた月が南東の山稜から昇り、一帯は蒼い月明かりに照らされていた。本格的な梅雨入りまでまだ間があるこの時期、夜の空気は寒さを感じるほどに冷え込んでいる。 
 畑を抜けたお実は月明かりを頼りに裏山の小道を歩いていた。小道から外れた杉林の闇の中に、ポッとほのかな明かりが灯っている。その光を見つけたお実は小走りに駆け出した。 
 永田家の若旦那である虎男が大木の根元であぐらをかいていた。浴衣の上に半纏を羽織り、寒そうにしながらせわしなく煙草を吸っている。ほのかな明かりの正体は脇に置いた提灯だった。 
「遅かったじゃねえか」 
「す、すみません」 
 お実は小声で謝り、慌てて浴衣の帯に手をかけた。虎男は吸っていた煙草を揉み消し、提灯をお実の足元に置いた。月明かりの届かない林の中で、提灯の明かりのみがお実を照らし出している。 
 お実は帯を緩めて肩を剥き出し、そのままストンと浴衣を足下に落

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