月光の囁き

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2007-12-10



 「父さん、月が追い掛けて来よるよ」


祖母の家に遊びに行った帰り道、月光の照らす山道を車で走っていた。

兄と姉は遊び疲れたようで、リクライニングを倒した後部座席で寝ている。


 「ん?何てや?」


 「そいけん、月がこっちば見よるんよ」


父はヘッドライトが照らす山道の先を見つめたまま、僕の言葉に耳を傾けてくれた。

この当時から思っていたのだが、こういう帰り道の父親というものはとても大きく見える物だ。
皆が寝静まった車内で唯一人黙々と車を運転する姿に、僕は密かに憧たりしていた。


 「ん~月が、かぁ」


月を見上げることなくそう言った。
当然、運転中なのだから仕方ない。

僕はと言うと、助手席に膝立ち

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