立春

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季節は巡り、早や立春である。
とはいえ、春はまだ遠しという感じだ。

あたしは、夫に先立たれて一人になってからというもの、ウツを発症し、病院を転々とする毎日だった。
長かった更年期障害も終焉を見せ、却って心の空洞が大きくなったように思える。
もはや修復不可能なくらいに。

息子が二人いるのだけれど、未婚だが独り立ちしてくれている。
彼らの心配をしないでいいだけ、まだましなのだ。

あたしの住む公団住宅にほど近いワンルームマンションを借りて息子たちだけで一緒に暮らしていた。

「さびしいなぁ」
あたしは、万年床に入って、電気ストーブの火を見ながら、その奥に歪んで映る自身の顔を見ていた。
口を膨らましたり、ぽかんと開けたり、百面相しながらその変化を見ていた。
五十女の独り寝はこんなもんだ。

風が強いのか、電線を鳴らしている音が窓越しに聞こえる。
「もがり笛」って言うんだと、次男の彰人(あきと)が教えてくれたっけ。

彰人は、今、何してるだ


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