情けは人のためならず

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2010-10-17

今の世の中、他人に対する親切や好意というものは、何か嘘臭いものだと感じていた。24時間テレビを見ても偽善にしか感じなかったし、若者が老人に席を譲る行為も白々しいように感じていた。何よりも、自分自身が他人に親切をする際、心のどこかで何か見返りを期待するような打算的な気持ちがあることを理解していた。だから、世の中には無償の愛や心からの親切などというものは幻想に過ぎないと思っていた。

しかし、今考えると、詐欺師が基本的に他人を信じられないというのと同じで、そのレベルの人間は、そのレベルでしか人を見ることができないということなのだろう。そんな私の考えを打ち破ったのがAだった。

Aは私の1コ下で、会社の後輩だった。入社当初の第一印象は、温厚ゴリマッチョだった。彼は技術職で即戦力だったが、その働きぶりは別格だった。問題は、私とAが所属している部署の係長だった。使えないくせに、上司へのゴマすりと部下へのパワハラの技術は一流だった。仕事は部下に押し付け、手柄だけは自分がいただくというパターンに、心底うんざりさせられていた。

ある時、我

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