ユリ

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なおぼんが「ユリ」という仮名でお仕事してたときのオハナシ。

「ナマでしたいんでしょ?」
上目遣いでユリが言う。
「そりゃ、なるべくなら・・・」
俺は乾いた唇で、声にならない声でわずかにそう答えた。
「アタシもね、なるべくならゴムはつけたくないの」
ベッドの上を滑るようにユリが俺の腰元あたりから伸び上がり、右側の空間を占有した。
真横に彼女の瓜実顔(うりざねがお)があった。甘い吐息はカンパリの香りを帯びている。

一重瞼(まぶた)の細い目はある種の冷たさを感じさせたけれども、その奥に柔和な光を湛(たた)えていることも、俺は見逃さなかった。

四十に手が届こうかという女が、これまで経験してきた苦渋を一反の生地に織り成しているようでもある。

「どうしたの?急に黙っちゃって」
一瞬、不安そうな表情で俺に聞く。
「えっと、きれいな目だなって・・・」
「やだ、やめてよ気持ち悪い」

俺は、そんなユリが愛おしく思えてならなかった。


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