水面に反射するような
2007-01-28
その日も、月夜が部屋に直線を引いていた。
細く射す光の筋は舞い散る埃の踊り場であり、その光景はまるで自分の心情を照らしているようだった。
またひとつ寝返りを打った。また羽毛から小さな埃が飛び舞う。胸の中がそわそわ騒がしくて眠れない。小さく聞こえる寝息をよそに、僕は上半身を起こした。
僕の頭上には弟が寝ている。同じ顔をしているのに、何が僕と違うのか。同じ時を同じ時間過ごしてきて、弟に彼女がいて僕にはいない。考えれば惨めな自分を責めるだけで終わってしまう事が、切ない。別に特徴も無く、決して美形でもない僕と弟だが、自分だけは女性を好きになれない事だけが唯一「自分」という人間の欠陥に感じられた。「好きだよ」と言わされて、はにかみながら訝しげな自分を演じる弟に、僕は欲情している。血が繋がっているから、同性だから、一般論に蔑まれる自分の愛情の行き場は自分の心の奥底だけだった。狭い二段ベッドの低い天井が、地上と地獄を隔てる分厚い壁に感じた。いきり立った僕の性器が、カーテンの隙間から見える、遠景にそびえる鉄塔のシルエットとフラッシュバックして絨毯に影を作った。