バレンタイン
2010-02-18
風雪は午後になるともう凪いで、それでもちらちらとまだ落ちかかる雪のひとひら、ひとひらの間から、微かに日の光が射すほどになった。久しぶりの登校日がこの日とは、受験生にもささやかな温情というやつなのだろうか。いや、単なる偶然に違いない。
チョコレートはこないだの日曜日に用意していた。ずいぶん長いこと迷った末、チョコでもセーターでもマフラーでも、何にしろ手作りというのはやめておくことにした。向こうが仕切りもしていないのに、いきなり全力でぶつかっていってはこっちが転けるのが目に見えている。ましてやこの時期だ。さりげなさが勝負であろう。これが勝ち負けかどうかはともかくとして。この田舎町で手に入る中では最高の、でもまあメリーさんのチョコレートに、ラッピングだけは気合いを入れてくすんだローズのリボンを淡いグリーンの包装にめぐらせた。使い古しのリボンで何度も練習してから本番に臨んだものだ。問題はチョコに付けるカードだ。猫の形の白いカードに、さて何て書いたらいいんだろう。勇気が出ない。いっそカードなしでチョコだけ渡してしまおうか。でもそんなのって卑怯じゃない?もらった方が困るんじゃない?手が震え