十七才年上だった彼女73枚

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2017-12-23

一・旅立ち

 あれは、まだ雪深い三月上旬のことだった。長靴を履いて、重い色のコートを羽織って、上野修は掲示板を目指して歩んでいた。東北大学医学部。その狭き門を三度挑んできた。だが、毎年落ち続けて、もう限界まできていた。四度目の今年こそはと挑んだが、試験を受けた感触は思わしくなかった。年を重ねるほど、落ちたらどうしようと思う気持ちが強くなって、悪夢にうなされる日々が続いたからだろう。それでも、わずかな望みを抱いて、番号を探した。
「一一一、一一三、一一六、一二〇……」
 一一八番はなかった。修は深くため息を付いた。目を閉じて再び見たがやはりなかった。天を仰ぎ涙を堪える。
 そんな人はここにはたくさんいる。泣いたってなにも変わりはしない。修は、重い足取りで駅へ向かった。
 これからのこと、どうしようかと思った。それよりも両親に報告するのが辛い。きっと表面ばかりの慰めの言葉を用意しているだろう。本当は心の中で軽蔑しているのに。
 四回も落ちるなんて、なんて馬鹿な息子だろう。
 妹のわたしがもう受かって

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