ミカ 〜短編〜

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おれの子供が行く保育園にはミカ先生がいる。

表情も態度も柔和そのもの。
芸能人で言えば、木村多江に似ていた。

ある日、おれが一人でスーパーに行くと、

「あの…」

と、声をかけられた。
咄嗟に誰かわからなかったが、ミカ先生だった。

「ああ、こんばんは。買い出しですか?」

時間は午後4時半。
買い出しにしちゃギリギリ遅い。

「い、いえ。買い出しというほどじゃないんですけど…」

彼女の手には弁当があった。
勝手に料理上手みたいなことを思っていたおれは苦笑いしてしまった。

「たまには弁当もいいですよね」

赤面するミカ先生をよそに、おれはそそくさと買い物を済ませた。
出口へ向かうと、タバコの自販機脇にミカ先生がいた。

「あ、先生。さようなら〜」

「はい!また来週もお願いします!」

一瞬足が止まったが、今日は土曜日なので来週ということだろう。

おれは車に乗り、スマホを開いた。


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