後悔

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2006-03-09

地下鉄の改札口、券売機の近くに、ちっちゃなリュックをしょった小さな男の子がいた。
券売機と自動改札の間を行き来して、不安げに周囲を見るその子に、俺は声をかけた。
「どうしたんだい?」と。
男の子は答えた。
「おじいちゃんのとこに行く」
たぶん、4歳とかそこらだと思う。
目じりの辺りにカサブタみたいなのが出来てて、やんちゃそうではあったけど、可愛らしい顔して、きれいな目で、真っ直ぐに俺を見て、その子はそう言った。
これまでなら、俺は子供になんて声もかけなかった。
結婚して2年、妻が子供を授かって、周りの子供たちまで可愛く見えていたから、そんなことをしたのかもしれない。

「1人で行くの?パパかママはいないの?」
「1人で行くの。おじいちゃんのとこに行きたい」
「お金は?切符買ったり、電車乗ったりできるの?1度おうちに帰って…」
「行くの!おじいちゃんのとこに行くの!お金もあるの!」
男の子は声を張り上げた。

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