口裂女
2008-07-23
ある夏のむし暑い夜、仕事帰りの男がバス停に向かって歩いていた。
バス停まであと数十メートルというところで、ふと後ろから呼ぶ声がする。
「すいません、少しお時間よろしいですか?」
男が振り替えると、道の脇に一人の女が立っている。
いつもならば、無視して通り過ぎる男だが、女の異様さに呆気に取られて、つい立ち止まってしまった。
暑そうなワインレッドのロングコート。脂の薄そうな腰まで伸びた髪。大きなマスク。緑のリュックサック。
「……なんですか?」
不気味に思いながらも声をかける男。
「私きれい?」
少し訛りのある女の口から出た言葉は、男が女に抱いたイメージ…口裂け女そのままを表した言葉だった。
身の危険を感じた男は、急いで逃げ出す。すると、後ろから女が泣きながら「待ってください」と絞り出すように言った。
なんだか、自分のしたことに罪悪感を感じ、女の所に戻る男。
涙を流す女に理由を聞くとこうである。