海外赴任が決まった友人が、俺の嫁とデートをさせてくれと言ってきた
----/--/--
「え? 香菜となんだって?」
直之は、思わず聞き返した。親友の伊黒の言った言葉が、聞こえてはいるけど理解できなかったからだ。伊黒は、
「いや、しばらく戻れなくなっちゃうから、思い出に香菜ちゃんとデートさせて欲しいなって……。ダメかな?」
と、言った。切れ長の目でクールな印象の伊黒が、モジモジとしながらそんなセリフを言うことに、直之はさらに驚いた。
直之と伊黒は、高校時代からの付き合いだ。中肉中背でルックスもごく普通の直之と、ちょっと怖い印象を持たれがちだけがルックスの良い伊黒は、なぜか初対面の時から馬が合った。
あまり女性にもてない直之に、モテて仕方ない伊黒が女の子を紹介したりすることもあった。
そんな伊黒が、海外赴任が決まった途端、急に直之の妻の香菜とデートがしたいと言い出したことは、直之にとっては青天の霹靂だった。
「それって、本気で言ってるの? なんで今さら香菜とデートしたいの?」
直之は、驚いていると言うよりは怪訝な顔で質問する。直之と香菜は大学の頃に出会った。なので、もう7年くらいは経過して