鈴音の場合5
2004-09-10
鈴音の場合
五 メタモルフォーゼ
「満様。ドイツからビデオが届いております」
梨乃はこのセリフを二分ほどかけてようやく言い終えた。今の彼女は、会話をすることすら困難な躰にされていたのだ。
満は、必死に言葉を紡ぎだそうとする梨乃をみて、満面に笑みを浮かべている。どうやら彼の愛する梨乃は、彼の許せるギリギリのところまで壊されているようだ。これが完全に壊されているのではつまらない。どうにかこうにか“自我”と呼ばれるものが残っていて、今の自分の姿に涙を流せるくらいが丁度良いのだ。
その点、康之たちの仕事は完璧だった。何しろ梨乃の、惨めで可哀相なこの姿を見るだけで、満の男根は爆発しそうなほどに勃起してしまえるのだから。
彼は己れの愛するもの、大切なものが汚され、壊され、踏み躙られる事にとてつもない快感を覚える異常者であった。だからあえて自分の決断で梨乃を康之たちに投げ与えて、取り返しのつかない事をしてしまった快感に身悶え、目の前で犯され汚辱にまみれる梨乃の姿に猛烈に射精するのである。