アイスピックの震え   1/7

開く
2013-02-28

「待ちかねたぜ、嘉川冴月(かがわさつき)刑事殿。ようこそ俺達の巣へ」

閑散としたバーの中、人相の悪い男が入り口へ視線を向ける。
場には他に似た印象の男達が数名おり、口元に薄笑いを浮かべていた。
彼らの視線を集めるのは、ひどく鋭い印象を与える女だ。
濃紺のトレンチコートを羽織り、薄手のセーターとジーンズを覗かせている。
やや固い格好ながら、極上の女であることは一目で見て取れた。

櫛の通りの良さそうな、肩甲骨までの黒髪。
変化の解りやすい、柳のように細い眉。
意思と責任感の強そうな瞳。
控えめな鼻梁に、物事を細かく追求しそうな薄い唇。
同僚からさえ『アイスピック』と揶揄される、その潔癖で緩みのない雰囲気は、誰が見ても警察の女だと気付くだろう。

「まずは、捜査協力に感謝するわ」

冴月は後ろ手にドアを閉めて歩を進め、脱いだトレンチコートをカウンターの椅子に置いた。
薄手のセ

お勧めの体験談