私の愛したブロンズ像
2017-10-09
一
朝、目が覚めるとやけに寒気がしてカーテンを開けた。思った通り雪が降り積もっていた。地面にはひざほども高く、電線の上に今にも落ちそうに、そして私の車もすっぽりと綿帽子をかぶっていた。
(イブには雪が降っていないとつまらないが、それにしても容赦(ようしゃ)がない。また、今年も雪かきのシーズンが来たのかと思うとウンザリする。それでも、この北海道から出て行くつもりはないのだが)
そんなことを考えてる間に身体が冷えてしまった。私はたまらず身震いをして、石油ファンヒーターのメモリを上げ急いで身じたくを始めた。
朝の仕事、雪かきを終えてやっとバスに間に合った。肩で息をしながらつり革につかまっていると、バスは坂道を下って幣舞橋(ぬさまいばし)に差しかかった。私は、いつものように窓の凍りを手で溶かし外を見る。
――薄衣一枚をまとい、長い髪をうしろでまとめ、一点遠くを見つめ、凛(りん)と立つ姿は、美しい。だが、どんなに美しくても彼女はブロンズ像。私の声には答えてくれない。