探偵事務所

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2010-09-08

 私の勤め先は表向き探偵事務所となっている。所長を筆頭に女性しかおらず、仕事は三十台から四十台の女性から依頼される浮気調査や蒸発した夫の捜索が殆どだった。しかしそれだけでは収入が少なく、試行錯誤して仕事を増やそうとした。陰陽ブームに乗ってお祓いの真似事もしてみたが、上手くいかなかった。苦しくなった私達はある仕事を始めた、声高に宣伝できないのがもどかしいが、最近では人伝に噂が広がり月に決して少なくない数の仕事をこなしている。その仕事の内容から、私達は去勢屋と呼ばれるようになった。

「大丈夫ですよ。男性は臆病なくせにプライドの高い生き物です。特に女好きの人は自分が男であることにとても自信を持っています。そう言う人は、男という拠り所を無くすと情けないくらい無力になるのです。我々がこの仕事を始めて今まで揉め事にならなかったのは、そう言った男のプライドを逆手にとっているからでもあるのです」
 所長の言葉はゆっくりであり淑やかで相手を包み込む力があった。今回のクライアントは四十二歳の女性で、痩せた首と細い鎖骨が印象的なおとなしそうな人だった。
「でも、あの、本当

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