狐
2017-02-18
20160915-狐
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<前書き>
明治の初め頃、人々は文明開化等と浮かれて、洋服を着て西洋人を気取った者も居りました。しかし、多くの者はまだ洋服では無くて、和服だったのです。ここ南足柄山もそうで、洋服は駐在の巡査位な物でした。そんな田舎町に起こった奇妙な話を一節。
1
朝から降り出した雪は、今日の夕方にはもう膝くらいに成っていた。前田剛(つよし)は、その雪を掻き分け掻き分け前へ進んでいた。早く行かなくてはと、気ばかりが焦る。
園田富美(ふみ)の家は、剛が務める小学校から一里ほどの距離で、何でも無い時には苦に成ら無いが、今日みたいな吹雪の時は苦労する。息は出来無いし、足が思うように前へ進ま無い。早く会いたい気持ちばかりが空回りして、剛の体力を否応無しに奪って行った。
やがて、視界は乏しくなり、命の危険を感じるまでに成った。ああ、ここで行き倒れるのか、俺は。と諦め掛かった時だっ