不条理な世の中 (2)
2017-01-10
ミキは今、龍聖の横たわる病室にいる。
サトルを誘ったものの
結局はここにはミキ一人で訪れることになった。
断るサトルの気持ちも十分にわかるため、サトルに対して、薄情者などといった気持ちは全く芽生えなかったが
それよりもミキは今、目の前にいる龍聖の変わりように言葉を失っていた。
ミキの目の前にいる男は間違いなく龍聖ではあるのだが
その男からは以前の様な覇気は全く感じられない。
そこには魂の抜けた屍の様な男が横たわっていた。
幸いながら龍聖の意識は
はっきりとしているようで、言葉も普通に話せる様ではあるものの、
彼は病院の先生の話にもほとんど耳を傾けず
ふさぎこんで、リハビリにも全く取り組んでいない様であった。
事実、龍聖はいまだ、お見舞いに来てくれたミキとも一言も言葉を交わしていない。