未亡人になった私は今、息子に溺れている

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2016-12-27

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あたしは、夫に先立たれて一人になってからというもの鬱を発症し、病院を転々とする毎日だった。
長かった更年期障害も終焉を見せ、却って心の空洞が大きくなったように思える。
もはや修復不可能なくらいに。
息子が二人いるのだけれど、未婚だが独り立ちしてくれている。
彼らの心配をしないでいいだけ、まだマシなのだ。

あたしの住む公団住宅にほど近いワンルームマンションを借りて息子たちだけで一緒に暮らしていた。

「寂しいなぁ」

あたしは万年床に入って、電気ストーブの火を見ながら、その奥に歪んで映る自身の顔を見ていた。
口を膨らましたり、ぽかんと開けたり、百面相しながらその変化を見ていた。
五十女の独り寝はこんなもんだ。
風が強いのか、電線を鳴らしている音が窓越しに聞こえる。
『もがり笛』って言うんだと、次男の彰人(あきと)が教えてくれたっけ。

彰人は、今、何してるだろう?

やさしい子で、なにくれとなく、世間に怖気づいた母


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