月下囚人 ~双華~
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その時、私はまるで針のむしろにでも立っているような気がした。
周囲から注がれる視線。
まるで視線で穴でも開けようとでもしているような鋭い視線。
それが、四方から私に向けて注がれていた。
全身が心臓になったかのような感覚。
私は必死に走り出した。
その拍子にコートがはだけそうになり、必死に手で押さえて走る。
素裸にコート一枚という格好の私には、逃げることしか出来なかった。
その時、わたしは自分の足元が崩れていく感覚に囚われた。
僅かに聞こえてくる声が、わたしにこれが現実だと突きつける。
わたしはゴミ箱の影に必死に身を隠し、震える身体を精一杯縮めた。
このままだと見つかるのも時間の問題。
けれど、わたしは動けない。いまここから動いたら絶対に見つかってしまう。
ゴミ箱の陰に隠れていることしか出来ない。
ただ、見つからないことを必死に祈る。
生まれたままの姿——全裸でい