数万キロ離れた彼方で……
2010-05-25
真崎大陽(35)は、アメリカ宇宙戦略局(NΛSΔ・エヌラムダエスデルタ)の一室にいた。
妻の真崎尚実(37)は宇宙飛行士で、スベースシャトル・ジャクソン号に乗り組んで、3日前に宇宙に旅立ったばかり。今日は、二人の息子、拓也、健也とともに、NΛSΔに招かれていた。
国際宇宙コロニーに滞在する尚実とテレビ電話で会話することになっていたのだ。
ところが、NΛSΔの都合でテレビ電話の時間が変更になったとのこと。健也と拓也はNΛSΔ職員の薦めで、ニューヨークから来ていた日本人学校の生徒と合流し、ルーズベルト宇宙センターを見学することになった。
大陽は特にすることがないので、家族向けの交信用個室で待つことにした。
その室内にはでかでかと星条旗が飾られ、ソファの前に大型モニタとカメラが設置されている。
NΛSΔコーディネーターで、尚実の家族を担当している Aya・Tanakaが飲み物を持ってきた。
23歳の彼女は、4分の1だけロシア系の血を引く日系アメリカ人で、Ayaには「彩」という漢字が宛てられて