理佳の妄想(その1)

開く
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 理佳は今、とある銭湯の前にいた。時間は午前9時を少し回ったところ。店が開くまであと1時間はある。と、そこへ銭湯の主人が自転車で現れた。いつも通り店の前に自転車を止め、郵便受けから郵便物と一緒にカギを取り出す。大きなガラス扉のカギを開け、中へと入っていった。入ってすぐの左右の壁際に下駄箱があり、下駄箱の前に置いたスノコを通じて左側に男湯、右側に女湯への入り口がある。どこにでもある昔ながらの銭湯だ。入ると脱衣場になっており、番台があって入浴料を支払うのだろう。
 男湯側の扉から明かりが漏れている。主人は男湯側の脱衣所へ入っていったのだろう。いつも営業時間の5分前に来る3人の初老の男性のために、先に男湯から準備するのだ。そして営業時間を10分ほど過ぎた頃に2組の老夫婦が現れる。最寄り駅の繁華街側とは反対側の、住宅街が控えている少し落ち着いた場所のこの古い小さな銭湯には、それほど多くの客が訪れることは無い。午前中はせいぜい10人程度だろう。この1ヶ月間、理佳は念入りにリサーチしてきたのだ。
 理佳は大きく深呼吸して心を落ち着かせた。やるならこのタイミングしかないことはわかっている。わ


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