神憑き

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2012-11-26

 当時高校生で夜遅くまで部活に励んでいた俺はその日、いつもの様に電車に乗って帰宅した。電車が出発した時、もう夜9時は過ぎていたと思う。都会の人からしたら驚くかもしれないが、俺の住む田舎では、この時間の電車が終電となる。
 友達や部活仲間も大勢乗っていた。だが彼らは新興住宅地の駅で降りていく。俺はそこから更に2駅、終点地点の一つ前という奥地まで電車に揺られなくてはならなかった。バスケット部でレギュラーやってて、当時は地区予選前だったから練習も普段より厳しく、どうしようもなく疲れていた俺は、友達が降りると少し眠ってしまった。
 起きると、電車は止まっていた。ヤベッと思って窓から外を見ても真っ暗で、駅のホームも明かりが落ちていてすごく暗かった。電車の中だけが明るい。そして、電車の中にも、誰も乗っていなかった。駅員すら居ない。
 不気味になって、俺は電車を降りた。暗闇に目が慣れてくると、確かにここは駅のホームであると確認できた。看板には平仮名で『くらじ』と書かれている。そんな駅名、聞いたこともなかった。
(俺が知らないってことは、ここが終点なのだろうか?)

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