メリークリスマス

開く
2008-11-30

「メリークリスマス!」と、その手紙には書かれていた
例年より寒さの厳しい十二月二十四日のことだ
僕はその日、珍しく妻より早くに起きた
枕元にある無骨な安物の目覚まし時計は六時少し前を指していた
時計が甲高い下品な音をたてるには、まだ三十分あった
妻はまだ隣で静かに寝息を立てている
髪先が顔にかかり、ときどきくすぐったそうに鼻をひくひくと動かす
呼吸するたびに、肩は僅かに上下した

毛布に包まれた彼女の体は、袋に押し込まれた豚の肉塊を想像させた
豚は死んでいて、それ自体はぴくりともしない
ときどき豚の体内にいる悪魔が暴れるのだ
ここから俺を出せ、と

僕は急に、横で眠りを貪る女の無神経さに腹が立った
息苦しくなるほど強烈な憎しみが胸に広がった
妻にそんな感情を抱いたのは初めてだった
友人の紹介でこの女と結婚してもう六年になるが、結婚生活はまず順調と言えた
もちろ

お勧めの体験談