三十四年ぶりの再会

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大勢の人が新幹線から降りて、流れるように改札口を通過していきました
その流れが見える片隅で、私はあなたの姿を探し求めました
見あたりません…
それもそのはずです。あれから34年も経っているのですから…
二十三歳のあなたの顔は浮かんでも、五十七歳のあなたの顔は分からないはずです…
人並みが過ぎて改札口を通る人もなくなりました
待合室を見渡しても、それらしき姿は見あたりませんでした

「片手に新聞を持っていますから…」と電話で予め聞いていましたのに…
新聞を手にしたそれらしき人は見当りません
諦めて帰ろう…と思ったその時、売店の前に立っている人に目がとまりました 
その人は紳士で、私の記憶にある二十三歳青年の面影ではありませんでした

その人に向かって歩くと、その人も気がついたのか、私の方に向かってきます
近づくとその人は
「失礼ですが、山下睦巳さんですか…?」と
私の旧姓をフルネームで呼びかけてくださいました


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