サイキック×3

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2018-02-10

一 小学校時代

 小学校に上がったある日、牧草地で牛を追っていると、誰かの声が頭に響いた。振り返ると歳の離れた姉が文句を言っている。
(まったくお母さんには頭に来るわ。勉強すれって言いながら、家の手伝いをしなさいって。できる訳ないじゃない、そんなこと!)
 だが、姉の口は開いていない。僕は、不思議に思い聞いた。
「ねえ、おねえちゃん。いつ、腹話術なんて覚えたの?」
「なに、バカなこと言ってるの。はやく、牛をぼいなさい!」
 おかしい。腹話術じゃなかったらなんなんだ? 僕は、頭をひねりながら牛を追った。牛をぜんぶ牛舎に入れて、ほっと息をついていると母が僕の名前を呼んだ。
「公人(きみひと)、ありがとうね。もう上がっていいから」
(この子は、酪農は継いでくれないわね。頭でっかちだから……)
 またしても声が頭に響て来た。僕は、この独り言のような声に返事をしてしまう。
「頭でっかちで悪かったね」
 僕の返事に驚く母。そして、気味悪い者を見るように

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