雪女

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2016-10-17



 わたしは、冬山で拾われた。
 氷点下二十度以下の激しい吹雪の中で、たった一枚産着(うぶぎ)を羽織った女のあかちゃんが火の出るように泣いていたらしい。それを見つけたのは、わたしを育ててくれた父。登山中に遭難して、偶然わたしを見つけ保護した。そのあと、なぜか雪はやみ、父は無事下山した。
 わたしが、なぜ冬山にいたのかは分からない。もしかして、自殺しようとした産みの親が、わたしを置きざりにしたのかも知れないけれど、本当のところは分からない。いずれにせよ、わたしは誰かに捨てられたのだ。
 わたしの首には、ペンダントが掛けられていたと聞いた。どこにでも売っている安物のイルカをかたどったそのペンダントは、たぶん産みの親が気まぐれにくれたプレゼントかも知れないけれど、わたしにとっては大事な手掛かりとして大切に持っている。
 この話を両親から聞いたのは、小学校に入る前日だった。わたしは、なんの驚きもなく、悲しみもなく、それを聞いた。
 そのことを学校に入って友だちに話すと、変だと言われ、わたしは泣いて家に帰った。母は、

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