少年

開く
2008-11-13

お伊勢参りの翌年、梅が開き始める頃。

山の奥にあるお稲荷様の神主さんから、お社の修繕依頼が入った。
そう、弟弟子の一人が憑かれたあのお稲荷様の社だ。
親方に呼ばれ、
「まあ、おめぇにやってもらおうか。」
と任される事になった。

とりあえず久しぶりに様子を見に行くと、昨年の台風で結構痛んでいる。
一通り見積もって、一休みしようとお社の縁に腰を下ろすと左横に女が座っていた。
俺が座った後から座ったのではなく、俺が座った時には既に女が座っていた。
もちろん、俺が座る前には姿など見えなかったし、
境内には俺以外の誰も居なかったはずだ。
驚きはしたが、とりあえず気付かない風を装って直視せずに様子を見る事にした。
俺も女も何も喋らず、ただ時間だけが経過していく。
どれほど経っただろうか、女がつ、と立ち上がった。
長い髪が風に揺れているのが視界の端に映る。
女が俺を見下ろしているのが

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