神と人間
2014-04-21
「ガランガラン」
若い夫婦が河原にある社(やしろ)で鈴を鳴らしている。
「よ~し、奮発するか」
夫、明夫は財布から1万円札を取り出している。
「よしなさいよ。もったいない」
「ケチることないって。川で溺れたりしないようにしっかり守って貰わないといけないからな」
そう言いながら、妻である悠子の制止も聞かずに明夫は1万円札を賽銭箱に入れた。
「もう。こんな小さい神社じゃ御利益もしれた物だわ」
「いや、地元の氏神に参るのが本当なんだから。いくら力の強い神様だって遠くにいたら何にもしてくれないさ」
そんなことを言いながら明夫は「パンパン」と手を打ってお辞儀をした。
悠子もそれに倣うが、赤ん坊を抱いているので拍手は出来ない。
「神様、お賽銭はずんだんですから千尋のこと宜しくお願いしますよ」
「さあ行きましょう。蚊に刺されるわ」
悠子はさっさと小さな鳥居をくぐって参道-と言っても河原から土手に続く獣道のような物だが-を歩き始めている。